「八雲もち」158円
竹の皮に黒糖味の餅を包みこんだ和菓子。口の中でとろんと溶ける食感とカシューナッツの風味が珍しい。
都内でも人気の沿線、東急東横線。
この沿線には、食通たちを唸らせる“食の名店”が立ち並びます。
はたして、真の意味での名店とは、どういう店なのだろうか。
最終的に私たちが辿り着いたのが、小さいながらもこつこつとがんばっているお店。
そして、取材で訪ねた先にいたのは、“わが店を、こよなく愛する人たち”でした。
この一皿、この一品に込められた作り手の思いこそが、食の愉しみ方を教えてくれるのですね。

「八雲もち」158円
竹の皮に黒糖味の餅を包みこんだ和菓子。口の中でとろんと溶ける食感とカシューナッツの風味が珍しい。
目黒名物「八雲もち」の誕生
昭和40年創業の老舗の和菓子屋。
八雲というこの地を選んだのは、もともと本店が軽井沢にあり、当時のひいき客がこの辺りに自宅をもっていたからだという。
「目黒の名物をつくろう」と先代が生み出したのが、この地名から名付けた「八雲もち」。40年経った今でも、ずっと愛され続けている和菓子だ。
一代目から二代目へ
二代目を務める石原謙さんは、大阪で修行を積み、23歳で目黒のこの店へ戻ってきた。外で学んだことは、少しずつ自分の店へと還元した。
でも、何よりも大事にしたのは、「おやじの熱い真っ直ぐな思いと、おやじが持っていたポテンシャルを受け継ぐこと」だったという。
石原さんは45歳になった今でも、毎朝4時半に起きて、5時には店に入り、その日の仕込みをする。もちろん弟子だって何人もいる。
でも、まずは自らが率先して動く。それが「おやじの背中が教えてくれたこと」だったのだ。
石原さんは言う。「世間一般では、ボスは三角形の頂点かもしれないが、私は逆三角形の一番下で支えるのがボスの役割だと思うのです」
朝一番に誰が来ようが、そんなこと和菓子を見たからといってわかるわけではないだろう。でも、目に見えないプロセスや思いが、時を経ても変らずに愛され続ける和菓子をつくっているのだと、改めて痛感させられるひと言だ。
二代目がつくる新しい味
2007年夏から、この店に新たに加わった一品がある。かき氷の「お任せコース」だ。
これは、かき氷の中に、真心込めてつくった『ちもと』の上品な和菓子をたくさんぶちこんだもの。老舗の和菓子屋が考えたとは思えない斬新な一品だ。
二代目にまた、新しい風が吹きそうな予感がする。